>■ ON THE OCEAN ROAD !

[2005/8/20]

この春からシーカヤックを始めた。シーカヤックというのは、F1カーのボディのようなシェイプをした1人ないしは2人乗りの海用カヌーで、材質もFRPやカーボン製、色もカラフルでTie Dyeみたいなのまである。だから一見すごく未来的な感じなんだけど、実は北方のアリューシャンやグリーンランドなどの海洋先住民の狩猟用の皮舟を原型として、素材は現代風に進化しているが、少なくとも5000年以上の歴史をもつ、古くて新しい!その性能も含めてすごく完成されたフネである。

それは、第一に「旅ができる」ということ。僕自身はまだ近くの無人島まで行って帰ったり、泊まりでもせいぜい30キロ一泊トリップくらいしか経験がないけれど、最近知りあったこの世界の先達たちの体験話によると、沖縄から東京だとか、日本一周、はたまたアリューシャンを北上してアラスカに渡り、そのままアラスカを南下しただとか・・。もちろんみんなテント、寝袋、食料持参の単独旅の話である。またアメリカ人の中には、カリフォルニアからハワイまで一人で行ったスゴイのまでいるらしい。まあそんな大洋横断トリップなんて、まだまだ初心者の僕には夢物語だけど、そんなサーフィンのロングボードくらいの小さなフネで、沿岸沿いを日中漕いで、浜に上がってテントを立てて・・を繰り返していくと、その時の自分に与えられた時間の中で、この21世紀現代の日本においてさえも、結構ワイルドな旅が可能なんだ!って気がついた。

実際いま瀬戸内に面した地方の街に住んでるんだが、普段は手付かずの自然というものに触れる機会なんてほとんどない。けれど一たび海に漕ぎだして、目の前にある島々を巡ると、いまだ全く人の手が入っていない海岸線の風景や、そこに住むミサゴやハヤブサなどの鷲鷹類、世界最小のスナメリクジラなど、今ではレッドデータブックに載ってしまっているような希少な野生生物に割と頻繁に出会えたりもする。また何より普段あたりまえに見ている海が、そこに出て、自分が住む陸地を振り返り眺めるだけで、本当に字のごとく180度世界が変わる! 島まで行かなくても沿岸沿いを少し漕ぐだけで、陸からは想像できなかった風景が広がる。流木の宝庫のような、道からのアクセスが不可能な小さなビーチにだって、簡単に上陸出来たりもする。小回りがきくので岩と岩の間や、モーターボートやヨットではとても行けないようなところでもスイスイ入って行ける。そんなところは、イソギンチャクや海藻がイッパイ、ユラユラ揺れていて魚の影も濃い。そうしてパドルを漕いでいるうちに、海のなかウォーキング・メディテーションならぬパドリング・メディテーションって感じで、時間がゆったり流れはじめる・・・。

20代の頃、ビートニクスに憧れてアメリカをケルアックやカウボーイ・ニールよろしく放浪したいと旅に出た。そしてインディアンの世界に魅かれ、見渡すかぎりの地平線広がる大平原の居留地で、彼らの儀式に参加させてもらって以来持ち続けてきた疑問。自分は一体何者なのか?っていうこと。瀬戸内で生まれ育った自分が見ていたのは、地平線と同じ広がる空と海の彼方。僕が通ったインディアンの大地でも同じようなものを感じたけれど、同時に思った、何か、どこか、違う。

去年富士山に大勢の先住民を招いて、自分たちの住むくにを真剣に祈った。そして気がついた。自分たちの住んでるこのくには、その周りを圧倒的な量の”海”に囲まれた島ぐにだった、というあたりまえのことに。また、日本はアジアの一部だって、いままで疑いもせずに思ってきたことが、それも事実だけれど、実はもっと広い生態系も含めた意味において、太平洋海洋文化圏の一部、ヤポネシアと呼ぶほうがピッタリくるってことに! それはしいては地球と呼ばれるこの星は、実は水球なんだっていうことにも。

そう、おれたちは本来、海洋民族であり、アイランダーだ!

そして蘇ったその感覚をより確かなものにしようと思って始めたのがシーカヤックという新しくて古いフネ。またそんな自分の”直感”を後押ししてくれたのが、ハワイにおいて、自分たちは一体何者なのか!という根源的な意識を喚起した、カヌー・ルネッサンスと後に呼ばれることになる古代の大型航海カヌー、ホクレア号の復元とその古代航海術による太平洋各島までの航海。またそのことを熱く伝えてくれる内田正洋さんという海洋ジャーナリストでシーカヤックの世界の大先達の語る壮大な夢溢れるストーリー。これに関しては僕なんかのニワカ仕込みの話よりは、実際の内田さんが語る、例えばターザン誌特別編集号「ホクレア号について語ろう!」などを、興味ある人はぜひ読んでもらいたい、と思うが。

とにかく日本列島ヤポネシアンとして、海に出て、このくにを眺め、旅することをお薦めしたい。そこで見えてくるもの、感じること、ハッキリ言ってサイケデリックなんかでのヘッド・トリップなんて全然比じゃナイ! 海洋モンゴロイド1万年の旅路(トリップ)的感覚が蘇ってくる、そんな予感! それはすごくスーパーリアルな旅だと、初心者ながらシーカヤックに目覚めた僕は断言する。同じトリップするならリアルな旅をしよう!この周りを海に囲まれたヤポネシアの島々で。そうして取り戻した全感覚をもって歓迎しないか?ホクレアの来訪を! 再来年、ハワイを出航してやって来る。沖縄、九州、瀬戸内を通り、そして北海道まで航海すると、大先達から喜び溢れる情報が飛び込んできた!実はこのことは、とてつもなく大きな意味と意義を含んでいると感じているし、また機会があれば伝えたいことがたくさんあるけれど。とにかく、今僕は、水平線から現れる舳先にティキ神を祀った古代カヌー、ホクレアを沖縄のカヌーであるサバニや、アイヌのカヌー、イタオマチェップらに混じり、大勢の古代海族の魂が蘇ったカヤッカーの中、歓声を上げながら迎える自分の姿がハッキリ見えている。

どう? そんな歓声の海のなか、一緒に漕ぎ出さないか!

 

★追伸
最近世の中に出始めたフリーペーパー「近未来ガイド OOH!」に載せてもらえるそうです。
それで書きました。9 月終り頃に出る号らしいです。毎号おもしろいですよ OOH!


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